✍温聲筆記✍

温又柔が、こんな本を読んでいる、こんな文章に感銘を受けた、と記すためのブログ

2022-01-01から1年間の記事一覧

「純粋小説」と台湾人たち

基本的なおさらいとしてのメモ。「日本統治期台湾における文学の最大の問題とは、言語的アイデンティティであったと言えよう。母語としての台湾語、『祖国』中国の近代的白話文、『宗主国』日本の日本語をどのように選択し駆使するかということは、作家とし…

かつて、女性は「参政権」がなかった。国際女性デーに思うこと。

メモ。「一般に、参政権という政治的権利の拡大は民主主義の拡張を示すものとして理解されている。納税額にもとづく制限選挙から「普通」選挙へ、そして女性参政権行使へ。それは、民主主義の担い手が広がり、より公正な形に近づいてきた証というわけだ」(髙…

「独裁者」がいる国の子どもたちは…

メモ。「当時、ぼくたち子どもは政府を信用していませんでした。政府の言うことすべてに対し、信用を失っていたんです。子どもというのは、ごく小さい子どもであっても、自分には説明できないような何かを感づくものだと思います。少なくともぼくには説明で…

未来との「関係」を更新する

メモ。「未来が、肯定的なものであるか、否定的なものであるか、という議論はむかしからあった。また、肯定的な世界のイメージや、否定的な世界のイメージを、未来のかたちをとって表現した文学作品も多かった。しかしぼくは、そのいずれもとらなかった。は…

「わたしが間に合わなかった時代」に招き寄せられる

メモ。「それはわたしが間に合わなかった時代だが、その時代は絶えずわたしを招いている」(鍾文音) 昨年の今ごろ、楊翠著『少数者は語る』の書評を書く機会に恵まれた。 「家」をめぐる独自で多彩な世界 - 温聲提示 冒頭で引用した鍾文音の言葉はこの本で…

「自分と自分が大事にするものの居場所」のために

メモ。「刻一刻と光は姿を変え、数えようのない青の色みを見せながら空は遠ざかってゆく。そして太陽が去ってゆく先にまた別の色が生まれようとしている。ほんの一時目を離せば見逃してしまうほどに目覚ましく姿を変える、名指す言葉のない色たち。時として…

私には、彼を選ばないという選択肢さえなかった

メモ。「世界規模で踏み込んで来る人々のわたしたちを動揺させる圧力・圧迫にいかに対処すべきか(…)その圧力によってわたしたちは、自分たちの文化・言語に狂信的にしがみつくいっぽうで、他の文化・言語は退ける。時代の流行に沿ってわたしたちを鼻持ちなら…

空白のパスポート

メモ。「トランジット・エリアに到着した乗客は地理上はある国に属しているが、法律上はどこにも所属しない。地上にありながらどこからも認知されていない。彼のパスポートにはくっきりと出国のスタンプは押されているが、入国のスタンプはない。一体彼はど…

「不確かでちらちらとゆれる弱い光」を……

メモ。「最も暗い時代でさえ、人は何かしらの光明を期待する権利を持つこと、こうした光明は理論や概念からというよりはむしろ何人かの人々が、彼らの人生と仕事に置いて、ほとんどあらゆる環境のもとでともす不確かでちらちらとゆれる、多くは弱い光から生…

決意

メモ。「私の文学を偏愛する顧客には一点の喜びを、私の文学を憎悪する連中には一点の嘔吐を与えたい――私は、自分の狭量はよく承知している。その連中が私の文学によって嘔吐を催せば、私は愉快である」(魯迅)。 私は、’善い人’であろうとする傾向が強すぎ…