✍温聲筆記✍

温又柔が、こんな本を読んでいる、こんな文章に感銘を受けた、と記すためのブログ

2024-01-01から1年間の記事一覧

完璧な装幀

メモ。「手紙を最初に読んだときには、遠い親戚や友人に何通も発送されたうちの一通、死亡通知に思えた。ところが、今読むと、明らかに彼女だけに宛てられたものだ、文のひとつひとつが彼女のために慎重に考え抜かれている。あまり書きすぎないように書き手…

「私たちはユニークな存在である」

メモ。「花瓶を割ってみなさい。その断片を再び寄せ集める愛は、それが完全だった時にその均整を当然と受け止めていた愛よりも強いのです」(ウォルコット)。 中村達さんのご著書『私が諸島である』で引用されていた、ノーベル文学賞受賞時のウォルコットの…

戸惑いながら、絶望に抗うというかたちの「希望」を保つ

メモ。「此岸と彼岸に亀裂がはいっているようにも見えるし、蛇のようにぐねぐねの、寒々しい途方もない道のりの先に、すでにこの世を去った人びと、これから生まれ来る人びととの出会いを幻視し、もうひとつのこの世が浮上する。そんなことを想ってみた」(…

私の特別な存在——台湾”新二代”作家・陳又津——

あるむの台湾文学セレクションシリーズ。最新刊は、陳又津さんの長篇小説『霊界通信』! 1986年生まれの陳又津さんは、私にとって、今、最も敬愛する現代作家のお一人です。日台作家会議での登壇や、高山明氏の演出によるヘテロトピアシリーズで執筆を共…

🏵ミモザの日に

わたしは、この本のなかで紹介されているアイルランドの作家メアリー・ダフィーのことばがとんでもなく好きで、特に太文字にした箇所は、もはや創作の指針になっている。 「感情を昂らせるのでもなく哀れみを誘うものでもなく、多様性と豊かさを併せもつ障害…

螺旋階段みたいな、この過程をまた昇ってゆく

メモ。「よい散文を書く作業には三つの段階がある。構成を考える(komponieren[作曲する])という音楽的段階、組み立てるという建築術的段階、そしておしまいに、織りあげるという織物的(textil*)段階である」(ヴォルター・ベンヤミン) この短文には、…

愛とか強調すると顔が変になる

2・26。きょうの日付を見て、何となくそそのかされる心地で、またもや「悲しきASIAN BOY」を聴いてしまった。聴き入ってしまった。名曲!! 公式サイトより借用しました そして、秋生まれにしたいと考えていた小説の主人公の誕生日。ここ数週間、いつがいい…

反「美しい魂症候群」のために

メモ。「悪の世界が外側にあり、善良で正しく純粋無垢な〈私〉がそれと対決しているという態度にとらわれている限り——それをモートンは、〈美しい魂症候群(beautifulsoul syndrome)〉と名づけるのだが——、純粋無垢で正しい〈私〉は、その状態のままで固定さ…

「略歴」との戦い

メモ。「書くということは、『略歴』との戦いである。略歴を読んで納得するたぐいの『表現』は、『書かれたもの』の領域には入らない」(リービ英雄) 1994年、リービ英雄は「最後のエッセイ」と題したエッセイにこう書きつける……「複数の答えを出すのに…