✍温聲筆記✍

温又柔が、こんな本を読んでいる、こんな文章に感銘を受けた、と記すためのブログ

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

善きフィクションと人生

メモ。「小説を書く過程は、私より先に生きた彼らから、人生を学ぶ時間でもあった」(イ・グミ)。 また、一冊の私(たち)にとって大変重要な本が刊行された。 著者のイ・グミは、「複雑で多面的な存在」である人間を「日帝強占期という歴史的枠組みに閉じ…

「存在しない国」が、根っこにある私たちの物語を…

メモ。「台湾にルーツがあるからと言って、その誰もが台湾の歴史や自らの法的地位を説明できるわけではない。むしろ詳しく知らない方が自然である。日本にいると日本のニュースは意識せずとも入ってくる。しかし台湾に関しては、親や親戚から話を聞いたり、…

李良枝について

メモ。「そもそも言語の問題であれ、詩の問題であれ、男女の問題であれ、また〈在日韓国人〉、あるいは他のどんな立場の問題であれ、個人の性格やその個人の特有な志向性を無視して語れるものなど、果たしてあるのだろうか。 すべての現象は個人的である、と…

「皆が、健康でありますように」

メモ。 「『年年歳歳』を書いている間、私に起きたことは忘れないだろう。 小説を一つ書くたび 小説に可能な方法で一つの人生を私は生きてきて、 そのことに驚異しつつも、怖かった」(ファン・ジョンウン) たった、今、読了。まだ、何も言いたくない。うか…

「興味深い時代を生きますように」

メモ。「見えるのは私を見ているあなたを見る私」(フィオナ・タン) 2017年の暮れ、「平成最後の日」が正式に発表されると、私は自分自身が30歳になったときはそれほどでもなかったのに、突然、「30年」という月日の幅を意識するようになった。「30年」で区…

ニホン語と生きている、この歴史の中の「私」を刻み続ける

メモ。「研究者は自分のあり方に自負を持てば持つだけ、そこにひそむ権力性を見ないようになってしまう。そこがまさに問題なんであって、むしろその自分にとって見えないものは何なのか、見えないものをそれでも研究の対象にしているのはどういうことなのか…