✍温聲筆記✍

温又柔が、こんな本を読んでいる、こんな文章に感銘を受けた、と記すためのブログ

”不良”になる

メモ。「何かを拒絶し、拒否し、全部気に入りませんと言って選択しないことより、そうなんだ、何があったの? と言い、そうですか、そうですねと承諾することにした。まるでこれらのすべてを受け入れるみたいに。これから起きるできごとの間をひらひらと踊りながら乗り越えていけるみたいに」(パク・ソルメ)

 パク・ソルメの短篇のうち、「じゃあ、何を歌うんだ」と「冬のまなざし」が特に好きだ。どうしてだろう。パク・ソルメを読んでいると、自分は、いまだに、ものを書く時、何かと”おりこうさん”でいたがるし、生真面目すぎるなと思わされる。まるで、まだ義務教育を受けている真っ最中のような、受験勉強をしている時のような、ものを書く上での自分の律儀さに気付かされる。私ももっと、書くことにおいての”不良”にならなくちゃなと思う。「私はなぜ、あらゆる問いの前でよろめくのだろう? こういうことすべての理由はいったいどこに見出せる? この二つの疑問について、私は私が手にしたこの感情を、この気持ちを忘れない」。その感情に似たものを、その気持ちに近しい何かを、たぶん私も抱いたことがある。それも、一度や二度でなく、何度も何度も。だからこそ私は、よろめくことそれ自体を、あらゆる問いを突きつけられた際の、自分のとりあえずの答えにしておくという闘い方の限界も知っている。もはやその感覚は、書こうと思う小説の出発点にはなっても、着地点にはならないのだと知っている。さて、どうしよう。これからは、どうしよう。

今日の源:パク・ソルメ著、斎藤真理子訳『もう死んでいる十二人の女たちと』(白水社、2021)パク・ソルメ著、斎藤真理子訳『未来散歩練習』(白水社、2023)。