✍温聲筆記✍

温又柔が、こんな本を読んでいる、こんな文章に感銘を受けた、と記すためのブログ

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メモ。「〈わたしたち〉とは誰だろう。この問いは、どのような声を聞いているのがわたしたちか、どのような声が含まれているのがわたしたちか、と言い換えられる。ドイツ語で〈声〉を意味する言葉〈Stimme(シュティメ)〉は、選挙の〈票〉のことでもある。したがって、どのような〈声〉を聞いているのがわたしたちか、どのような声が含まれているのがわたしたちか、とは、誰を、なにをデモクラシーに含みうるか、という問いである。わたしたちの社会には、たしかに存在するのに聞かれていない〈声〉がある(たとえば子どもたちの、死者たちの、まだ生まれていない者たちの、選挙権のない者たちの、さまざまな苦しみを抱える者たちの、犠牲を強いられている者たちの、また自然や、動物たちや、物質たちの〈声〉……)。かれら・それらの〈声〉は、〈票〉として数えられていない。多くの〈票〉にならない〈声〉は現代の政治制度では聞かれない。しかしそれがあるべき社会なのか。わたしたちはどのような〈声〉を聞き、〈票〉として数え入れ、今とは異なる〈わたしたち〉になりうるのか」(林立騎)

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今日の源:エリフリーデ・イェリネク著、林立騎訳『光のない。[三部作]』(白水Uブックス、2021)、訳者あとがき「◆〈わたしたち〉の声、〈よそもの〉への扉」。

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