メモ。
「『年年歳歳』を書いている間、私に起きたことは忘れないだろう。
小説を一つ書くたび
小説に可能な方法で一つの人生を私は生きてきて、
そのことに驚異しつつも、怖かった」(ファン・ジョンウン)
たった、今、読了。まだ、何も言いたくない。うかつに言葉に頼ってしまったら、今、この胸を吹き抜けていったばかりの風とともに、この本を読んでいる間中、ふつふつと感じていたとてつもなく大切な何かが、すぐにでも姿を消してしまいそうで……ただ一つ、口にできそうなことといえば、私はこの物語を必要とする一人である自分が狂おしいほど誇らしい。
この誰にも奪わせたくない余韻の中で、はっきりと確信する。次。この次に私が読む小説は、ずっと前から気になっていたものの、なんとなく読まぬまま来てしまったチャンネ・リーの『最後の場所で』だろう。
今日の源:ファン・ジョンウン著、斎藤真理子訳『年年歳歳』(河出書房新社、2022)