✍温聲筆記✍

温又柔が、こんな本を読んでいる、こんな文章に感銘を受けた、と記すためのブログ

「華」の根を辿る旅路は、たった一つきりでは絶対にない

メモ。「私は華僑4世ですが、アイデンティティは日本人です。私の様な日本人は他にも沢山いるんだ、この島国には色んな人が暮らしているんだ。そんな私は今、中華系日本人という名札が一番しっくりきています」(林隆太)

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林隆太監督によるドキュメンタリー映画『華のスミカ』がDVD化!映画公開時、ささやかなコメントを寄せたご縁で、監督インタビューと劇場予告編付きDVDをちょうだいしました。林さん、プロデューサーの直井佑樹さん、多謝!

横浜華僑の過去と現在をめぐる林監督と関廣佳さんのトーク再録が封入されてて、読み応えたっぷり!すでに映画を3回観てるのですが、また観たくなります。

林隆太監督は、わたしが来日した1983年生まれ。台湾で育っていたなら「外国語」であったはずの日本語を思考の支えに、わたしもまた、中国と台湾、二つに分かれた"中華"の根をたどって、みずからの"住処"を見つめたいと望んできました。

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そんなわたしにとって、『華のスミカ』という、祖国の政治に翻弄されながら横浜中華街を住処に暮らしてきた華僑やかれらの積み重ねてきた歴史に対して、あたたかなまなざしを注ぐドキュメンタリー映画監督として、林隆太さんは敬愛する同世代の表現者のお一人です。「中国語を話せない華僑4世」と「中国語が下手な台湾人」のわたしたちは、最愛の妻子にたらふく喰わせたくていっしょうけんめい働いてきた父親の息子と娘という共通点もあるためか、勝手ながら特別な親近感も抱いております。2021年夏に林さんにお会いした際のわたしは、小説「祝宴」を書いている真っ最中だったのもあって、大陸出身の父をもち日本で娘たちを育てた一人の男性をめぐる自分のその作品を、「紅衛兵」の格好をした父親の写真をきっかけの一つとして自らの出自と向き合うと覚悟した林さんはどんなふうに読むのかな? とひそかに思っていました。その小説をいよいよ単行本にする準備の真っ只中、DVDになった『華のスミカ』を受け取って、わたしたちの時間は着実に積み重なってるなとしみじみ。Life goes on……

www.hananosumika.com

DVDをとおして、これから映画『華のスミカ』と出会えるひとがまた増えるかと思うと、なんだか自分のことのようにうれしいです❣️

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自主上映会も募集中の模様。どこかで誰かが上映会を催すのなら私もゲストで呼ばれたい(小声で願望を囁く)