✍温聲筆記✍

温又柔が、こんな本を読んでいる、こんな文章に感銘を受けた、と記すためのブログ

書棚のなかに埋もれた、わたしやあなたの居場所

メモ。「…わたしたちの生きる世界のヴィジョンは、もはや絶望で覆われてしまっている。だからといって、この世界で生きる以上は自分と周囲の人々が幸せであってほしい、というささやかな願いは、そうそう捨て去ることはできないはずだ。第二世界とは、そんな普通のわたしたちのための不屈のヴィジョンだ。そこは、理想社会の夢が潰えたあとに、なおも人々のうちに必要とされるユートピアであり、〈国家でも、故郷でも、国でもない〉ものとして存在する。」(中村隆之)

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うつくしい気持ちを、よみがえらせてくれる、うつくしい本の予感。第二世界は存在する。こんな真夏の夜にしずかに読みたい。読もう。夜が楽しみになる。

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それにしても、イルマ・ラクーザの『ラングマザー 世界文学でたどる旅』(翻訳・山口裕之)や、くぼたのぞみ『鏡のなかのボードレール』、和田忠彦『タブッキをめぐる九つの断章』など、共和国の本は、それぞれ独特のうつくしさをたたえてる。カッコいい。

今日の源:中村隆之著『第二世界のカルトグラフィ』(共和国、2022)