✍温聲筆記✍

温又柔が、こんな本を読んでいる、こんな文章に感銘を受けた、と記すためのブログ

🦋輪舞する、魂たち。

メモ。「韓国でしょっちゅう襲われた既視感を、私は日本語を使い、日本の感性で育まれた者の(日本人であろうと、在日韓国人であろうと)脳に刷り込まれた〈彼方〉のせいだと思う。考えてみれば、大陸と陸つづきの韓国と違い、島国の日本は四囲を海に接しているだけ彼方が視界に入ってくる。玄界灘を越えたここはまぎれもない彼方だ。彼方を視界に入れて育った者が、彼方にいるのだから体の内部の時間や空間を認識する装置が狂い、既視感にも襲われもする」(中上健次

それ書きなよ、手記だって日記だっていいんだ。書いて治めるしかないーー1980年、ソウルで、中上健次は、のちに「由熙」を書くことになる李良枝にそう声をかける。

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明日は中上健次が逝ってから、30年目の8月12日🦋

今日の源:中上健次篠山紀信『輪舞する、ソウル。』(角川書店、1985)