✍温聲筆記✍

温又柔が、こんな本を読んでいる、こんな文章に感銘を受けた、と記すためのブログ

ペーパーガイジンの憂鬱

メモ。「おれは兵隊にひっぱられていらい、身分の登録の類いにアレルギーになったのさ。いったい全体、考えてもみろ、紙きれ一枚でひとの身分を拘束できる、などということがあってよいものか。こいつはどう考えてもペテンだ。ところが世の中にはどんなに喚きたてたって、人間一匹が紙きれ一枚にかなわないことが実在するんだからね」(大庭みな子)

運転免許証の更新時期が迫ってきた。紙の上では運転が「できる」ことになっている自分が相変わらず落ち着かない。私はペーパードライバーかつペーパーガイジン。紙の上ではガイジンというこの境遇から見える景色に目を凝らしながら、画面の中の自由(小説を書くこと)を追究する日々です。愉快に憂鬱な日々を淡々と。それにしても有効期限は「平成34年06月14日」。平成は30年で終わることを、まだみんなが知らなかった頃に交付されたのだった。終わらなかった平成、終わっていない昭和。書かなくちゃ、書かなくちゃ…

今日の源:大庭みな子著『ふなくい虫』(1974)